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日本の指導者達がアメリカとの戦争を決断するのに至った過程を十分に残していないのが問題なのだと思います。

国の存亡に関わる決断なのですから、当然何十時間、何百時間もの議論が戦わされたのでしょう。しかし、その議論が見えてこないのです。

お前ら、本当に、真剣に、あらゆる角度からあらゆる可能性を考慮した上で、アメリカとの戦争を決断したのか?ということです。

そして、戦争を始めるにしても情勢は刻々と変化しますから、その変化に応じてどのように対応するかもあらかじめ考えておかねばなりません。それらのことを本当に考えて戦争を始めたのか?ということです。

まさか最初から一億玉砕するつむりで戦争を始めたわけではないでしょう。どこまで敵軍がせまって来たら降伏するかも考えておかねばなりません。

ドイツが降伏したらどうするのか?ソ連が参戦したらどうするのか?あらかじめ考えていた上で戦争を始めるべきなのです。

しかし、そういったことを考えた上で戦争を始めたという形跡が見えないのです。戦争は一つのプロジェクトなのですから当然、戦争の見通しについての何百ページもの報告書が書かれて然るべきでしょう。

会社でも一つのプロジェクトを始めるには、その準備に膨大な予算と人員を割いて検討するはずです。プロジェクトが成功するか、失敗するかで会社の命運が決まってしまうのですから当然のことです。

しかしアメリカとの戦争を始めるに際しての、何百ページもの報告書はどこに有るのでしょうか?もちろん戦争を始める前にそれを国民に見せることはできないでしょうが、戦後何十年と経てば国家機密の指定を解除して国民に見せなければなりません。

そうでなければ何百万人もの犠牲者を出した国民に説明がつかず、納得も得られません。会社で言えば株主の納得が得られないということです。なぜアメリカと戦争した方が良いと判断されたのか?その報告書、何百ページの報告書はどこに有るのでしょう?


囲碁や将棋のプロだって、何手か先を必死で何時間も考えてから着手しています。あの時点でアメリカとの戦争が最善手だというのは納得いきません。

石油の獲得が目的なら他にも有ったのではないでしょうか?例えばソ連に石油を売ってくれるよう交渉するとかです。
 

日本がソ連と戦争すれば各個撃破作戦となります。軍事的には一応合理的判断と言えるでしょう。つまりドイツとイタリアと日本でソ連を攻撃することになるわけですから。この時点ではアメリカは参戦していないわけですから数的有利を得られます。ただソ連とは不可侵条約を結んでいましたが、ドイツがソ連との条約を破ったように、条約を守って国が滅んでは本末転倒なわけです。

ドイツとの戦争についても同じです。ドイツとの条約を守って国が滅んでは意味が有りません。実際歴史ではそうなってしまいました。

戦争をしないという選択肢はアメリカの要求を飲むことですが、アメリカの要求は中国からの撤退ですから、軍事的には可能であり、合理的です。というのも中国との戦争は泥沼のゲリラ戦となっていて、戦争を続けるのは無意味になっていたからです。中国から撤退できなかったのは軍事的理由ではなく、軍人たちが面子にこだわっていたからです。勝利なき撤退となって責任を取らされるのが嫌だったのでしょう。
 


アメリカと戦争する方がソ連と戦争するより楽だと言われるのですか?

当時のソ連はドイツと全力で戦っていました。ドイツの味方をしてドイツに勝たせるという作戦は合理的かと思います。

ドイツがソ連に勝てばドイツの敗北は無くなるでしょう。ドイツの敗北が無くなるということはドイツと同盟を結んでいる日本の敗北も無くなるということです。つまり日本の命運はドイツがソ連に勝利することにかかっていたわけですから、全力を挙げてドイツを支援すべきだったのです。

ソ連と戦いたくないならドイツと戦うべきでした。カスピ海の石油をシベリア鉄道を使って送ってもらえたでしょう。

ドイツとも戦いたくないと言うなら中国から撤退してアメリカの経済制裁を解除してもらうしかないでしょう。これが最善手でしょうが、軍を撤退させるというのは事実上の敗北を受け入れるということですから、なかなかできないことです。アメリカだってベトナムやイラクから撤退するのは難しいのですから。

しかし、歴史では日本はアメリカと戦争する道を選んでしまうのですが、これは最悪手としか思えません。南方の資源が欲しいだけなら真珠湾もフィリピンも攻撃せずに、石油地帯だけを占領する方がまだましだったでしょう。

アメリカを攻撃したわけではないのだから、アメリカも宣戦布告して来ないだろうという希望的観測の作戦で、予想に反してアメリカが宣戦布告してくれば完全な失敗となり、戦争は1年か2年で終わるでしょうから、少なくとも広島や長崎への原爆投下は無かったでしょう。

第二次大戦中のドイツとソ連の戦線に軍隊を送るのはソ連の協力が有れば難しくないでしょう。シベリア鉄道を使えば良いのですから。船を使うならパナマ運河を通って、ムルマンスクに上陸するルートが良いでしょう。途中、ドイツのUボートの危険が有るので駆逐艦を随伴させる必要が有ります。夏場なら北極海航路が使えるでしょう。砕氷船が必要ですが。

逆に、ドイツを支援しようとして、独ソ戦に兵力を送る方が大変です。その場合、パナマ運河は通れないでしょうし、イギリスも大西洋を通らせてくれないでしょう。もちろんシベリア鉄道は使えませんし。

アメリカの要求を飲めないのならハルノートは無視でいいでしょう。要は、石油をどこから手に入れるか?ということですよね?石油さえ手に入れば時間を稼げるわけでしょう?

ですからソ連から買えばいいだろうということです。ソ連とは不可侵条約を結んでいて敵ではないのですから石油を売ってくれるでしょう。石油を売ってくれた見返り兵力を送れないなら武器弾薬などの軍事物資を送っても良いわけです。

そうすればソ連も石油を売らないとは言わないでしょう。もし売らないと言えば、それを理由にソ連と戦争すれば良いわけです。ソ連だってドイツと日本の両方から攻められたくないでしょうから、石油を売ってくれるでしょう。

石油が手に入れば時間を稼げるので、その間の国際情勢を見て新たな方策を考えれば良いでしょう。アメリカやイギリスにしてもドイツと戦っているソ連を支援している日本を攻撃するはずは無いですし、いわゆるABCD包囲網と言われる経済制裁も解除してくれるかもしれません。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%85%E9%96%A3%E7%B7%8F%E5%8A%9B%E6%88%A6%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80


総力戦研究所はアメリカとの戦争は最悪の選択だという報告書を東条内閣に提出していたわけですよね。

それではなぜ、東条内閣はそれを無視したのか?ということですよね。論理的に考えてアメリカと戦争できず、中国から撤退もできないとすれば、後はドイツかソ連と戦争するかしか選択肢は残ってないでしょう。

ソ連と戦争を始めても石油は手に入らないのですから、ドイツと戦争するしかないのではないでしょうか?少なくともソ連と交渉してみるべきだったでしょう。ソ連と交渉したがダメだったという記録は有るのですか?

石油を運ぶ最も安価な方法はパイプラインですね。実際ロシアはウラジオストクまでパイプラインを引いていますが、当時はパイプラインは完成してなかった。

船で運ぶしかないとすると、ムルマンスクから運ぶ必要があります。結局、アメリカ、イギリスと協力してドイツのUボートと戦うことになります。

そうなれば、日本はアメリカにドイツと共同で戦っているのだから、経済封鎖を解除してくれと要求することができるでしょう。大西洋で協力しながら太平洋では対立しているというのは変な話ですから。
日本にとって、ソ連が最大の脅威で、その為に三国同盟を結んだのだとすれば、ドイツとイタリアがソ連と戦争を始めた以上、日本もそれに参加してソ連と戦争するのが筋でしょう。ソ連を攻撃する千載一遇のチャンスなのですから。

なぜ、ドイツとソ連との戦争を傍観していたのか?確かに日ソ不可侵条約を結んでいましたが、結果的にはこの条約は何の役にも立たなかったことは歴史が証明しています。終戦間際にソ連に攻め込まれ、60万にもの日本人が何年も強制労働に就かされ、10万もの死者を出したのですから。しかも北方領土は占領されたままです。

ドイツもソ連と不可侵条約を結んでいましたが、ドイツはそれを破ってソ連に攻め込んでいることを見ても、条約などなんの役にも立たないことは当時の政府も知っていたはずです。

しかし、日本政府はソ連と戦わずにアメリカと戦い、その結果アメリカを戦争に引き込んでドイツの敗北を早めてしまった。一番得をしたのはソ連でしょう。ソ連が最大の脅威だったのに、なぜ、そのソ連を助けたのか?やっていることが支離滅裂です。
ソ連と戦争する目的はドイツに勝たせるためです。日本がソ連と戦争を始めればソ連軍はドイツ軍相手に使っていた兵力を引き抜いて日本軍に向けて使わなければならなくなります。

ドイツ軍にとってはソ連軍の兵力が減るわけですから、それだけドイツ軍が勝つ可能性が高まります。ドイツがソ連に勝てばアメリカとイギリスはドイツと講和するしかないでしょう。そうなれば日本はドイツから石油を始めとする資源を輸入できます。

ソ連がドイツと日本を同時に敵としないということを最優先事項としていたのなら、日本はソ連を攻撃しないことを条件に、石油を輸入できたのではないでしょうか?

日本が政治的に混迷し、アメリカと戦争を始めたとすれば、つまり当時の指導者は、何が何やら分けが分からぬままに、ソ連に操られて、いつの間にかアメリカと戦争を始めて、そして負けてしまったとすれば、どう言い訳しようとも、当時の指導者は馬鹿の集まりとしか言いようがありません。

私が当時の日本側外交官だったとして、ソ連側の外交官と交渉したとすれば、その会話は次のようなものになるでしょう。

私「貴国がナチスドイツと国家存亡を賭けて激しい戦いをしているのは承知している。我が国、大日本帝国はあなた方、ソ連側に立って戦うこともできるし、ドイツ側に立っても戦うことができる。つまり、我々は公明党のようにキャスティングボードを握っているわけだ。もし貴国が我が国に石油を供給してくれるならば、貴国の側について戦っても良い」

ソ連「公明党って何ですか?石油を供給せよと言われても、どれくらい必要なのか?カスピ海の油田から極東までは遠くコストがかかり過ぎる」

私「戦争中なのだからコストは無視してやってもらいたい。それから公明党のことは知らなくてよろしい」

ソ連「コストは無視するとしても、戦争中でもあり、石油の輸送に集中することはできない。とても要求されるような石油の量を極東に送ることはできないだろう」

私「不可能なことを要求しても意味が無い。可能な限りで結構。足りない分はイギリス領ボルネオと、オランダ領インドネシアから輸入したい。しかし現在、経済封鎖を受けていてボルネオ、インドネシアからは輸入できない。貴国がイギリス、オランダと交渉して、日本が石油を輸入できるようにしてもらいたい」

ソ連「確かに現在イギリスとアメリカは軍事物資をムルマンスクに送ってくれている。彼らが我々を援助するのはドイツに勝たせたくないからだ。ドイツが我々に勝てばドイツに勝つことのできる国は無くなってしまうからだ。日本が我々の側に付いて戦ってくれるなら、我々は味方だ。イギリス、オランダに日本に石油を輸出するよう交渉してみよう」

私「その交渉がうまくいくことを期待している。石油が手に入るなら我々はあなた方の味方だ」

米英がドイツを勝たせない為にソ連を支援していたのは事実です。もし日本がドイツの側に立ってソ連と戦えば、ドイツを勝たせない為の米英の努力が無駄になるので、米英は日本がドイツと戦うのなら、日本に石油を売ってくれるはずです。

日本は警戒はされていたでしょうが、少なくとも第二次大戦で英米が一番恐れていたのは、ドイツがソ連に勝利することです。ソ連に勝利したドイツは原爆を作るかもしれません。

そうなればヒットラーのドイツは無敵になります。なにしろドイツにはV1という巡航ミサイルが有り、V2という弾道ミサイルが有るのですから。

関ヶ原以来、勝利する側に付くというのが戦争の常識ですから、ドイツが勝利するならドイツに付くしかないでしょう。米英がどうしても日本に石油を売らないというなら、日本はドイツに付き、ドイツと一緒にソ連を攻めてドイツを勝利させるしか有りません。

関ヶ原ではご存知の通り、小早川の裏切りによって、勝敗が決しました。

独ソ戦についても、日本の動き次第でどうなるか分かりません。日本の真珠湾攻撃というのは、ドイツ軍にとっては裏切り行為でしかありません。真珠湾攻撃の結果、アメリカが参戦することになったからです。日本の真珠湾攻撃を一番喜んだのはスターリンとチャーチルとルーズベルトでしょう。

もっとも日本にしてみれば、日本に相談も無くドイツとソ連は不可侵条約を結び、その結果、日本の内閣は潰れ、その後、これまた日本に相談もなくヒトラーが独ソ戦を始めた為に、再び日本の内閣が潰れで、ドイツに完全に振り回され、その度に内閣が潰れていたわけですから、とてもドイツと相談して決められないという心理状態だったのでしょう。

しかし日本が取るべき選択は、戦うならば、ドイツと戦うかソ連と戦うかいずれかであって、アメリカとの戦争は最悪の選択です。

ソ連と戦うとすれば、まず戦艦大和を始めとする全艦隊をチリ沖からマゼラン海峡を通らせて、大西洋に送り、そこから北上させてノルウェー沖まで配置すべきでしょう。イギリスと戦争を始めているわけではないですからイギリス海軍から攻撃される心配はありません。

その後、ソ連に宣戦布告してムルマンスクを砲爆撃し、ドイツ軍と協力してムルマンスクを占領します。ムルマンスクを占領すれば、アメリカとイギリスは軍事物資をソ連に送ることができなくなります。

その後日本海軍はムルマンスクを拠点にして、ドイツ海軍と協力しアメリカとイギリスの間の通商破壊作戦を実施します。これでイギリスは降伏です。

日本陸軍は、中国戦線を縮小して、それによって余った50万の兵力で、中国のタクラマカン砂漠を越え、カザフスタンを通ってカスピ海に進軍し、カスピ海の油田地帯を占領後、ドイツ軍と協力してスターリングラードで包囲されたドイツ軍を救出します。つまり極東ソ連軍を置いてけぼりにする作戦です。

これによってソ連軍は石油を失い、さらにスターリングラードも占領されては降伏するしかないでしょう。こうして日本とドイツはソ連戦に勝利することができるのです。

田母神将軍はアメリカの軍人からは評価されると思います。自分の職を投げ打って安全保障について警告を発したわけですから。軍人にとって最も恥ずべきことは、自分の保身と国の安全保障とを天秤にかけ、自己保身を優先し、国の安全保障を犠牲にすることです。軍人は「鳥も鳴かずば撃たれまいに」であってはいけないのです。

田母神論文が間違っているかどうかは議論によって決着を付ければ良いことです。それより問題なのは軍人が自由にものを言えないような雰囲気を作ることです。自由にものを言えなくなれば私が上記に書いたような自由な戦略や作戦を考えることができなくなり、アメリカとの戦争という間違った選択をしてしまうことになるからです。

第二次大戦の勝敗を決定したのは独ソ戦だというのは常識です。ですから日本がドイツの側に立って戦い、第二次大戦の戦勝国になるには、独ソ戦に参加してドイツを勝たせることに全力を上げるしかないのです。

将棋で絶対やってはいけないことは王より飛車をかわいがることです。第二次大戦でドイツ側に立って戦うと決めた以上、味方の王はドイツであり、敵の王はソ連なのです。ドイツが独ソ戦に勝つか負けるかによって、日本の命運も決まるのです。ですから日本の全海軍力をドイツの為に使うことが正しいのです。なぜなら王はドイツであり、日本の艦隊は飛車に過ぎないからです。

日本を防衛するには航空兵力だけで十分です。戦艦は必要有りません。ですから戦艦は大西洋に送った方が良いのです。

ただし、私は最善手の順番は、
1)アメリカの要求を飲み、中国から軍を引き揚げる。
2)ドイツと戦い、ソ連から石油を受け取る。
3)ソ連と戦う。
4)アメリカと戦う。

の順番だと思っています。いずれにしてもアメリカと戦うのは最悪手です。

確かに長期戦は無理でしょう。ですから短期決戦に賭けるしかありません。

さすがに日本陸軍兵士50万人を北京からスターリングラードまで歩いて行かせるのは無理かもしれません。時間もかかるし、補給の問題が有ります。しかし船に乗せてムルマンスクまで行くことなら可能でしょう。

陸軍の歩兵50万を船に乗せて、海軍主力艦隊と共にムルマンスクに突入させれば良いのです。ムルマンスク上陸後、50万の歩兵で一気にモスクワを占領すれば戦争は終わりです。もちろんドイツ軍と協力してですが。

日本海軍にも片道でムルマンスクに行く位の燃料なら有るでしょう。ただ日本海軍の艦船は長距離を航行するようには設計されてないので、船腹に増加燃料タンクを取り付ける必要が有りますが。

日本は海に囲まれているので航空戦力だけで守ることが可能です。戦争は皮を切らせて肉を切り、肉を切らせて骨を切るものですから、犠牲を恐れていては何もできません。

スターリンが最も恐れていることは日本が極東で軍事行動を起こすことではなく、ヨーロッパで軍事行動を起こすことです。日本がいくら極東で大暴れしようともスターリンは気にもかけないでしょう。

あくまでも主戦場はヨーロッパであり、ヨーロッパで第二次大戦の決着が着くのです。ですからヨーロッパに軍を送る必要が有るのです。ヨーロッパのドイツ軍が負けてしまったら、今度はソ連とイギリス、アメリカは日本戦に集中して来るでしょう。そうなっては日本は勝てないからです。


あまり利口でない人たちは、一般に自分の及びえない事柄についてはなんでもけなす。
ラ・ロシュフーコー 「道徳的反省」

当時の極東ソ連海軍の戦力というのは微々たるものです。イギリス海軍にしても、主力艦隊を極東に持ってくる余裕は無いでしょう。中国海軍に至っては日清戦争を最後に存在しないも同然でした。

ですから日本海軍の主力艦隊が極東に居ても活躍できる場所が無いのです。

これが日本海軍にとって最も恐ろしいことだったのです。なぜなら国民から「海軍は中国との戦いで、ほとんど役に立っていないのに予算は一丁前に取っている。無駄ではないか。海軍の予算を削って陸軍に回せ」と言われるからです。

軍隊といえども官僚の集団に過ぎません。そして官僚の考えていることは今も昔も変わりません。自分達の予算を減らされることを最も恐れるのです。「国益より省益」です。そのことは農水省や国土省の予算を削減しようとすると、国益を無視して反対する官僚がいるのを見れば分かります。

当時の海軍も同じだったのです。そこで海軍が考えたのがアメリカとの戦争です。アメリカと戦争を始めれば海軍が活躍できる場所ができます。誰も海軍は活躍していないとは言わなくなるでしょう。そんなことをすれば国が滅ぶという冷静な考えは「国益より省益」という、海軍省の予算獲得を優先する思想に吹き飛ばされてしまったのです。

しかし現在の我々は昔の海軍省の官僚達を笑うことはできません。いまでも「国益より省益」という考えが横行しているからです。

将棋をやったことが有る者なら誰でも知っていることですが、勝つ為には「遊び駒」を作らないことが重要です。対ソ連戦において、日本海軍艦隊は極東に居る限り遊び駒です。ソ連との戦争で日本海軍艦隊を最も有効に使う方法は何か?と考えれば論理的帰結としてムルマンスク突入しか有りません。

ムルマンスクを最後までドイツ軍は陥落させることができませんでした。これが独ソ戦でドイツが敗北する大きな要因なのです。ソ連はムルマンスクを確保することによって、イギリスとアメリカからの軍事物資の援助を受け取ることができたからです。

日本海軍主力艦隊と50万の陸軍部隊をムルマンスクに突入させれば、ムルマンスクを陥落させることができます。もちろんドイツ軍の協力も必要ですが。

ムルマンスクを陥落させればドイツが独ソ戦で勝つ可能性が大きくなります。そしてムルマンスクを拠点に、日本海軍はドイツ海軍と協力して通商破壊戦をやれば、ドイツがイギリスに勝つことも可能です。

ですから日本海軍のムルマンスク突入は、対ソ連戦で日本とドイツが勝つ為の論理的帰結なのです。

ドイツは燃料問題を人造燃料で解決していました。ムルマンスクの日本海軍はドイツから燃料補給を受ければよいのです。

ドイツは優れたレーダー技術も持っていましたからこれも取り付ければよいでしょう。

最善手は、      1)アメリカの要求を飲み、中国から軍を引き揚げる。
それができなければ、2)ドイツと戦い、ソ連から石油を受け取る。
それができなければ、3)ソ連と戦う。
それができなければ、4)アメリカと戦う。

ということです。しかし、4)のアメリカと戦うというのは最悪手なので、むしろ何もせずに座して死を待った方がましな位ですが。

50万人の歩兵は10万人に減らしてもいいでしょう。それでもムルマンスクを占領するには十分です。ムルマンスクの占領に第二次大戦の帰趨がかかっているのです。日本帝国陸海軍はムルマンスクを帝国陸海軍終焉の地とする覚悟と根性が無いのなら最初から戦争に参加すべきでは無かったのです。たとえ帝国陸海軍が全滅したとしても、ムルマンスクの占領には、お釣りが来るほど価値が有るのです。

ですから、ヨーロッパまで遠征出来る分の石油が有る段階で、ヨーロッパに艦隊を送って置くのです。

アメリカとの戦争は最悪手、大失策、愚策だと申し上げています。

もちろん日本はソ連と戦うことを決めた以上、極東でもソ連を攻撃するでしょう。日本陸軍の主力100万は満州に居るのですから。

しかし問題は海軍なのです。海軍力は極東ではその力を十分に生かせません。ですから海軍力を生かすためには大西洋に海軍力をシフトする必要があるのです。

日本海軍の主力でムルマンスクを占領し、ムルマンスク占領後、ドイツ艦隊と共に大西洋に進出すれば、当然、イギリス艦隊との海上決戦となるでしょう。

この海上決戦は日本ドイツ連合艦隊の方に分が有ります。航空母艦の差が大きいからです。イギリス艦隊は日本海軍艦上爆撃機にアウトレンジされ、戦力を半減し、それでも突入して来た残存艦隊も戦艦大和、武蔵にアウトレンジされて絶滅でしょう。

日本海軍の弱点はレーダーの装備が無いことですが、それはドイツ艦隊と協力することで解消されます。さらにいざとなれば生存可能型人間魚雷の投入も可能ですし。

こうして制海権を失ったイギリスは降伏するしかなくなり、イギリスからドイツへの爆撃も無くなります。

ドイツの工業力はソ連より上なのですから、ソ連がアメリカ、イギリスからの軍事支援を受けられなくなり、ドイツがイギリスからの爆撃によって工業生産を邪魔されなければ、独ソ戦でのドイツの勝利は確定です。
ドイツがポーランドに侵攻する前なら石油は自由に輸入できたのですから、ヨーロッパに遠征するだけの石油の輸入は可能だったでしょう。

日本海軍がどれだけの石油を確保していたかは推測だけで話しているので、お互い確定的なことは言えませんね。

要は、ソ連と戦争するなら、ムルマンスク突入までは、イギリスとの開戦は避けることです。もちろんアメリカとの戦争など論外です。アメリカと戦争になれば、どんな作戦も通用しません。

海上自衛隊は世界各国の艦艇に石油をタダで供給するくらいの給油艦を持ってますよ。海上自衛隊ですら給油艦を持っているのですから、帝国海軍が給油艦を持ってないことはないでしょう。

それに駆逐艦でも低速で航行すれば省エネで航行できます。速度を1/2にすれば航続距離は4倍に延ばすことができます。

アメリカが宣戦布告するのは真珠湾攻撃の後ですよ。従って真珠湾攻撃が無ければアメリカの宣戦布告は有りません。
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